子宮を切除するリスク

先日、日本女性骨盤底医学会が開催されました。とても良かった発表を紹介したいと思います。一つは昭和大学北部病院女性骨盤底センターから岡田先生の発表です。膀胱全摘後に起こる腟脱についての詳細な分析を示されていました。女性の膀胱全摘は通常子宮・腟壁を一緒に切除する合併切除が行われます。その後、3割近い方に腟脱(小腸瘤)が起こるとされていますが、腟壁は離開しその間は結合組織となっているというものでした。正常の腟壁がなくなり離開する理由を想像してみますと、まず子宮を取るということは子宮動脈から分岐する腟動脈が遮断され、腟への十分な血流(栄養)が確保されなくなる可能性があります。このため、腟を縫合した際に、縫合部分に栄養が回らず治癒がうまくいかない。そのうえ、縫合した部位に負荷(腹圧など)により縫合部分が互いに離れるようなストレスがかかり、皮膚でいうケロイドのような状態が考えられます。あとは嘉村先生がコメントされていましたが、腟縫合の方法にもよるということです。自然な縫合でないとくっつきにくくなることは想像に難くありません。

 もう一つは香川大学の岡添先生の膀胱全摘の際の子宮頚部の血流を温存しつつ、子宮の下垂を補強し、腟の軸をずらすというものです。一番予防で大事なことは、正常解剖をいじらないことだと思いました。もともとは腟脱ではないのですから。

 医原性に起こりえる合併症の原因を精査し、予防のためにしっかりと取り組まれている先生方の発表には感激しました。

 1.正常な腟壁を可能な限り残すこと

 2.血流を維持できるようにすること

 3.縫合が必要な際は正常解剖に沿った再建を行うこと

 子宮の病気で子宮を切除したあとの腟脱も同じ理屈だと思いますし、同じような合併症対策につながると思います。血流の問題で腟壁が萎縮したり、腟長が短くなるなどのリスクが手術後どのような影響があるのか?新たな手術方法が考案されることを祈りたいと思います。

  • 上図:子宮動脈からの下行枝は腟を栄養しています。
  • 下図:子宮を取ると腟動脈の血流が途絶えます。

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