漢方薬による好酸球性膀胱炎 ― 注意すべき副作用

はじめに

「漢方薬は副作用が少ない」と思われがちですが、実際にはまれながら重篤な副作用が報告されています。その一つが 好酸球性膀胱炎(Eosinophilic cystitis) です。膀胱炎といえば細菌感染が原因と考えられることが多いですが、薬剤性で発症するケースも存在します。特に漢方薬に含まれる 黄芩(おうごん) との関連が注目されています。

好酸球性膀胱炎とは

好酸球性膀胱炎は1960年に初めて報告された疾患で、膀胱粘膜に好酸球の浸潤が見られるのが特徴です。症状は通常の膀胱炎と似ており、

  • 頻尿
  • 排尿時痛
  • 下腹部痛
  • 残尿感

などが見られます。しかし 抗菌薬が効かず、尿培養でも菌が検出されない のが特徴です。

漢方薬が原因とされた症例

清上防風湯による初の報告

2009年、村岡らは 清上防風湯が原因と考えられる好酸球性膀胱炎 を本邦で初めて報告しています 。19歳女性が2年間服用後、頻尿や排尿痛が出現。抗菌薬で改善せず、服薬中止により症状が軽快しました。リンパ球刺激試験(LST)でも清上防風湯が陽性を示し、薬剤性膀胱炎と診断されています。

防風通聖散は痩せ薬としても人気があり、薬局でOTCとして購入することができます。このため注意が必要かも知れません。

他の漢方薬による報告

過去に報告された漢方薬による好酸球性膀胱炎が少なからず報告されています。

  • 柴苓湯(さいれいとう):8例
  • 小柴胡湯(しょうさいことう):8例
  • 温清飲(うんせいいん):2例
  • 柴朴湯(さいぼくとう):1例
  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう):1例
  • 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう):1例(村岡ら報告、本邦初)
  • 防風通聖散 (Katoら)

これらの処方の多くに共通して含まれる生薬が 黄芩(おうごん) であり、原因生薬として強く疑われています。

臨床上のポイント

  • 長期服用で発症することが多い
  • 服薬中止で比較的短期間に軽快する
  • 原因薬を見逃すと「難治性膀胱炎」として治療が長引く
  • 黄芩を含む漢方(小柴胡湯、柴苓湯、柴朴湯、清上防風湯、防風通聖散、女神散など)は特に注意

まとめ

漢方薬は自然由来で安全というイメージがありますが、免疫・アレルギー反応による副作用は確実に存在します。難治性膀胱炎の際には、服薬中の漢方薬を確認し、必要に応じて中止を検討することが重要です。

参考文献

  1. 村岡研太郎ほか. 清上防風湯が原因と考えられた好酸球性膀胱炎の1例. 泌尿器科紀要. 2009;55(6):353-355 
  2. 岡部和彦ほか. 柴苓湯による好酸球性膀胱炎の一例. 北関東医学. 1995;45(6):583-585
  3. 渡辺竜助, 姉崎衛. 小柴胡湯による好酸球性膀胱炎. 臨床泌尿器科. 1994;48:958-960
  4. 厚生省薬務局. 漢方製剤と膀胱炎様症状. 医薬品副作用情報. 1993;123:1-4
  5. 嶋田豊. 注意しておきたい漢方診療上の副作用. ファルマシア. 2020;56(3):198-202
  6. 山本真一ほか. 黄芩含有の2種の漢方薬により薬剤性膀胱炎を発症した1例. 京都大学学術情報リポジトリ, 2020.
  7. Kumiko Kato et al. Drug-induced cystitis caused by herbal medicine (Bofutsushosan). Urol Case Rep. 2021.

コメントを残す