「小学校に入ってもおねしょが治らない」「本人も気にするように…」
そんな相談をたくさんいただきます。
実は——
私は小学校6年生までおねしょをしていました。
今でこそ泌尿器科医として“尿もれ”の専門外来をしていますが、当時はまさに「ミスター尿もれ」だったのです。
🔹おねしょが治ったきっかけ
今でも鮮明に覚えています。
ある日、母に「おねしょした下着とシーツを自分で洗いなさい」と言われました。
冷たい水に触れながら、情けないような、でも“自分のことは自分でしよう”という気持ちが芽生えた瞬間でした。
その日を境に、ピタッとおねしょは無くなりました。
おねしょをしてもそんな不快なものと感じていなかったようにも思います。
「洗う」という行為が、心と体を目覚めさせる小さな自立のスイッチになったのかもしれません。
🔹夜尿症とは?
夜尿症(やにょうしょう)は、5歳を過ぎても月に数回以上、夜間の尿もれが続く状態を指します。
原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なります。
- 水分摂取が多い
- 夜に尿を作りすぎる
- 膀胱が小さくてためきれない
- 睡眠が深くて尿意を感じない
- 生活リズムが乱れている
などいろいろと原因は挙げられます。これは「心の弱さ」ではなく、体の成長の一部だと考えられます。ほとんどの夜尿は、その項目だけ成長が遅れているだけと考える事もできます。
🔹治療の第一歩は「生活リズム」
夜尿症の治療でいちばん大切なのは、生活のリズムを整えること。
- 夕食後の水分を控える
- 寝る前にトイレを済ませる
- 規則正しい睡眠時間をとる
これだけでも夜間の尿量が減り、体のリズムが整い始めます。
🔹体と脳をつなぐトレーニング
行動療法のひとつに「夜尿アラーム療法」があります。
尿が漏れ始めた瞬間にアラームが鳴り、トイレに行く習慣をつけるものです。
これを数か月続けることで、「尿意を感じたら起きる」という神経の回路が再教育されます。ネット通販などで購入することができます。
ここで問題なのが、アラームでも起きないこともあり、ご両親が「起こしてあげる」ことも必要となるかも知れません。
しかし、トイレに行かすだけでなく、「自分で洗う!」意識の改革がとても大事です。
これも本人が気づくことがスタートラインです。
🔹薬を使うこともあります
必要に応じて、医師が薬を処方する場合もあります。
- デスモプレシン(抗利尿ホルモン薬):夜間の尿量を減らす
- 抗コリン薬:膀胱の過敏を抑える
- 三環系抗うつ薬
ただし、薬はあくまで“補助”。
根本は「体のリズム」と「意識づけ」を育てることにあります。
🔹叱らず、焦らず、寄り添うこと
夜尿症は、“努力”や“根性”ではなく、成長のプロセスです。
大切なのは、「できた日を一緒に喜ぶ」こと。
私自身、「自分で洗う」という体験を通じて、少しずつ自信を取り戻しました。
おねしょを恥ずかしい過去ではなく、「成長の記録」として受け止めてほしいと思います。
🌙まとめ
- 夜尿症は「体の発達の時間差」であり、特別なことではない
- 治療の基本は生活リズムと行動療法
- 改善には平均3〜6か月
- 自分でできることを少しずつ増やすのが、自立への第一歩
- そして——かつて「ミスター尿もれ」だった私も、治りました
この体験が、今まさに悩んでいるお子さんやご家族に少しでも希望を届けられたら嬉しいです。
おねしょは、決して「恥ずかしいこと」ではありません。
それは、“成長の途中”の立派なサインです。

