— 「硫酸コンドロイチン+ヒアルロン酸」膀胱内注入療法ー欧州で広がる“GAG層補充療法”という選択肢 —
要点まとめ
- IC/BPSの一部では、膀胱表面(粘膜)を守るGAG(グリコサミノグリカン)層が傷み、痛み・頻尿・切迫感の悪循環に陥ります。
- ヒアルロン酸(HA)と硫酸コンドロイチン(CS)は、このGAG層を補充してバリア機能の回復を目指す治療です(=GAG層補充療法)
- 欧州(EAU)ガイドラインでは、より侵襲的治療に進む前の選択肢としてHAまたはCSの膀胱内注入を提案しています(推奨度:弱)。
どんな治療?— 仕組みと狙い
膀胱粘膜の最表面はGAG層で覆われ、刺激物(尿中のカリウムなど)から粘膜を守っています。GAG層が弱ると神経が過敏になり、痛みや頻尿が悪化。HAとCSを膀胱の中に直接注入することで、欠けたバリアを物理的・機能的に補うのが本治療の狙いです。


欧州で広がる背景
- ガイドライン整備:EAU(欧州泌尿器科学会)の慢性骨盤痛ガイドラインでは、HA/CS注入を「より侵襲的治療の前に検討」と明記。臨床の現場で受け入れられる土台となっています。
- エビデンスの蓄積:観察研究や比較研究で、症状スコアの改善、痛み・頻尿の軽減が報告。HA単剤とHA+CS併用はいずれも有効で、安全性も良好とする報告が多くなっています。
- 長期的な持続効果の示唆:CS+HAで中長期の症状改善が続くとする報告もあり、再発を繰り返す患者さんに選択肢が増えました。
どのくらい効くの?— 研究から見えること
- 短期成績:保守療法で不十分だった患者さんで、HA単剤/HA+CS併用の双方が短期的に有効という結果。両群で大差を認めないとした比較もあります。
- 中長期:3年程度の改善持続を示すデータあり(単施設の長期追跡)。ただし、より大規模なRCTが望まれます。
- 総説・レビュー:GAG補充が炎症・痛み・過敏性の低下に寄与し得るという機序と臨床効果を支持。PPS(経口ペントサン)より忍容性に優れるとの言及もみられます。
注意:いずれの研究も患者背景が多様で、Hunner病変の有無など病型により反応性が異なります。現在も多施設試験が進行中です。

実際の投与スケジュール(例)
施設や製剤により異なりますが、目安として:
- 導入期:週1回 × 4回
- 維持期:月1回 × 2〜6回(症状を見ながら延長・間隔調整)
実臨床の報告では、6か月前後での症状改善が目立ちます。(ICS)
安全性と副作用
- 多くは軽微な排尿時違和感や一過性の刺激症状。重篤な有害事象は稀です。
- 禁忌:明らかな尿路感染がある場合はまず感染治療を優先します(注入は感染が落ち着いてから)。ガイドラインも、段階的治療の一環として過度に侵襲的治療へ飛ばない方針を示しています。
DMSOとどう違う?
- DMSOは米国で古くから使われる注入薬で、AUAガイドラインに記載あり。消炎・鎮痛・筋弛緩など多面的作用が利点ですが、刺激感や臭気が苦手という患者さんもいらっしゃいます。
- HA/CSはGAG層の補充という明確な機序があり、忍容性の良さや欧州ガイドラインでの位置づけから、欧州では選択機会が増加しています。
- どちらが“上”というより、患者さんの病型・嗜好・既往治療に応じて使い分けるのが現実的です。

どんな人に向いている?
- 非Hunner型で粘膜防御の破綻が疑われるケース
- 感染反復後に膀胱過敏が残存するケース
- DMSOで効果や忍容性(痛み)が不十分なケース
- より侵襲的治療(麻酔下手技など)の前に試す価値がある方
※ Hunner病変優位例では、病変焼灼や切除などの内視鏡治療と併用・段階的に考えます。
よくある質問
Q. 何回で効果が出ますか?
A. 個人差がありますが、導入4回目以降から体感が出始める報告が多く、3〜6か月での評価が目安です。
Q. 併用はできますか?
A. 病型に応じて、理学療法・行動療法、疼痛コントロール、内服、内視鏡治療と組み合わせます。段階治療の発想が重要です。
Q. 再発しますか?
A. 改善しても再燃はあり得ます。症状に応じて追加の維持注入や他治療への切り替えを検討します。
まとめ
- CS+HA膀胱内注入療法は、GAG層の補充によって膀胱バリアを立て直す低侵襲の選択肢。
- 欧州ガイドラインでの位置づけと安全性の蓄積を背景に、欧州では使用機会が増加しています。
- 病型(Hunner/非Hunner)や既往治療、生活背景に合わせ、段階的・個別最適化で治療計画を組むことが大切です。
日本橋骨盤底診療所
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