〜IC/BPSと筋筋膜性骨盤疼痛症候群(MPPS)の深い関係〜
「膀胱が痛いから、膀胱だけ治してほしい」
間質性膀胱炎/膀胱痛症候群(IC/BPS)の患者さんから、しばしばそのようなお話があります。
確かに、痛みや頻尿、尿意切迫感などの症状があると、“原因は膀胱そのもの”と思ってしまうのは自然なことです。
しかし実際には、IC/BPSの患者さんの多くに「骨盤底筋の異常な緊張」や「筋肉の痛み」が合併していることがわかってきています。
IC/BPSとMPPSは非常に高率に合併する
近年の研究では、IC/BPS患者の約50〜90%に、筋筋膜性骨盤疼痛症候群(MPPS)が合併していると報告されています。
つまり、
- 膀胱だけが悪い
- 膀胱粘膜だけの病気
とは言い切れないケースが非常に多いということです。
実際に診察すると、
- 骨盤底筋がガチガチに緊張している
- 内閉鎖筋や肛門挙筋に強い圧痛がある
- トリガーポイントを押すと「いつもの痛み」が再現される
という方は少なくありません。
泌尿器科医は膀胱は詳しい!
泌尿器科医であれば、
- 内服薬
- DMSO膀胱内注入
- 膀胱水圧拡張術
- ハンナ病変焼灼術
などは自然に頭に浮かぶと思います。
しかし、「骨盤底筋」に目が向くことは、まだ多くありません。
学会でも膀胱病変については議論されますが、筋筋膜性疼痛については、まだ十分に議論されているとは言えない印象があります。
背景には、
「保険診療として確立されているもの=標準治療」
という考え方の影響もあるのかもしれません。
なぜIC/BPSで骨盤底筋が痛くなるのか?
現在考えられているのが、
「内臓-筋肉反射(Viscero-muscular reflex)」
という悪循環です。
① 膀胱の炎症や刺激
IC/BPSによる慢性的な痛み刺激が脊髄へ伝わる
↓
② 骨盤底筋が防御反応で緊張
膀胱を守ろうとして骨盤底筋が持続的に収縮
↓
③ 筋肉のスパズム・トリガーポイント形成
MPPS(筋筋膜性骨盤疼痛症候群)へ進展
↓
④ 筋肉の痛みがさらに膀胱を刺激
頻尿・尿意切迫感・骨盤痛が悪化
という相互増悪サイクルです。
つまり、
膀胱と筋肉が互いに痛みを増強し合っている
可能性があるのです。
骨盤底筋へのアプローチで症状が改善する
この関係を示した有名な研究があります。
M.P. FitzGeraldらは、IC/BPS患者に対して
- 骨盤底筋膜リリース(Myofascial Physical Therapy)
を行った群と、 - 一般的なリラクゼーションマッサージ群
を比較しました。
すると、
- 一般的マッサージ群:改善率26%
- 骨盤底筋膜リリース群:改善率59%
と、理学療法群で非常に高い改善率を認めました。
つまり、
「膀胱の症状と思っていたものの一部は、実は筋肉由来だった」
可能性を示しているわけです。
現在のガイドラインでも重要視されている
AUA/SUFUなどの海外ガイドラインでも、
IC/BPSの治療では、
- 膀胱だけを見るのではなく
- 骨盤底筋の緊張やMPPS合併を評価し
- 初期段階から骨盤底理学療法を行う
ことが推奨されています。
つまり、
「膀胱だけ治療しても改善しない理由」
が、筋肉側に存在することがあるのです。
「どこが痛みの原因なのか」を丁寧に探す
IC/BPSは、まだ解明されていない部分も多い病気です。
だからこそ、
- 膀胱粘膜なのか
- 骨盤底筋なのか
- 神経なのか
- あるいは複合的なのか
を丁寧に評価し、
その方に合った治療を組み立てていく必要があります。
膀胱だけでなく、骨盤底筋にも目を向ける。
それが、難治性頻尿や骨盤痛改善の鍵になるのかもしれません。
日本橋骨盤底診療所
参考文献
M.P. FitzGerald et al.
“Randomized multicenter clinical trial of myofascial physical therapy in women with interstitial cystitis/painful bladder syndrome and pelvic floor tenderness”



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