月に1回膀胱炎になります。

「月に1回くらい膀胱炎になります。もう2年になります」

今回受診された方のお話です。

2週間前にも膀胱炎になり、抗生剤を内服。
いったん良くなったものの、飲み終わった直後にまた膀胱炎になってしまいました。

「抗生剤を飲めば治る。でも、またなる。その繰り返しです。根本的に治したい」

と受診されました。

膀胱炎は珍しい病気ではありません

女性にとって尿路感染症は非常に身近な病気で、生涯に一度以上経験する女性は約50〜60%ともいわれています。

そして一般的に、

・6か月間に2回以上
・1年間に3回以上

尿路感染症を繰り返す場合を「反復性尿路感染症(反復性膀胱炎)」と呼びます。

大切なのは、

「膀胱炎になった」→「抗生剤を飲む」

だけで終わらせないことです。

「なぜ膀胱炎になったのか?」

を一度考える必要があります。

「なぜ?」がわかれば膀胱炎にならずに

たとえば、

「性交渉のあとに膀胱炎になった」
「忙しくてほとんど水分をとっていなかった」
「トイレを長時間我慢していた」
「大きな病気や手術をしたあとだった」

など、きっかけが明らかで一時的なものであれば、必ずしも詳しい検査が必要とは限りませんが

「特に思い当たる原因がないのに半年で何度も繰り返す」

「抗生剤をやめると、すぐにまた症状が出る」などの場合には、

「原因を探して治す!」

という視点が重要です。

「治す」といっても、必ずしも薬や手術が必要というのではなく、

水分摂取や排尿習慣、性交渉との関連など、生活習慣を少し見直すだけで改善する方もいらっしゃいます。

一方で、別の病気が隠れていることもあり

「膀胱炎を繰り返している」と思っていたら……

単に抗生剤を処方するだけではなく、その背景を考えます。

たとえば、

・膀胱がん
・間質性膀胱炎/膀胱痛症候群
・尿道狭窄
・尿道周囲膿瘍
・残尿や排尿障害
・尿路結石
・GSM(閉経関連尿路性器症候群)

などです。

実は膀胱炎を2次的な現象で、原因を見つけるためのサインとも言えるかも知れません。

だからこそ、繰り返す場合には「また抗生剤」ではなく、一度原因を探してみることが大切です。

膀胱炎になるから「しっかり洗う」は逆効果になることも

膀胱炎を繰り返す患者さんの中には、

「清潔にしなければ」

と思って、陰部を一生懸命洗っている方が少なくありません。

しかし、洗いすぎには注意が必要です。

洗浄剤などで何度も洗うことで、皮膚や粘膜を守っている潤い成分まで落としてしまい、乾燥や刺激症状を悪化させることがあります。

「フェムケア商品」が溢れ、いろいろ試される方もいらっしゃいますが、基本的には中まで洗う必要はありません。

外陰部をお湯でやさしく流し、乾燥する場合にはワセリンなどで保湿する。

まずはそれくらいのシンプルなケアからで十分なことも多いと思います。

閉経後の女性では「GSM」を忘れない

特に閉経前後から閉経後の女性で重要なのが、

GSM(閉経関連尿路性器症候群)

です。

女性ホルモンの低下によって、腟や外陰部、尿道周囲の粘膜環境が変化し、

・乾燥
・ヒリヒリ感
・性交痛
・排尿時の違和感
・頻尿
・繰り返す尿路感染

などにつながることがあります。

この場合、単に抗生剤を繰り返すだけでは、背景にある粘膜環境の問題は改善しません。

GSMに伴う反復性尿路感染症に対しては、局所低用量腟エストロゲン療法が重要な治療選択肢になります。

ここで注意したいのが、

「女性ホルモンを増やせばいいのだから、全身投与を増やせばいい」わけではない

ということです。

反復性尿路感染症の予防を目的として、全身のエストロゲン療法を新たに開始したり、増量したりすることが基本治療になるわけではありません。

一方、局所低用量腟エストロゲンは、GSMに伴う症状や反復性尿路感染症に対する治療として推奨されています。

今回の患者さんは全身ホルモン療法を受けておられ、

「婦人科の先生と、女性ホルモンの量を増やそうかと相談していました」

とお話しされていました。

ここはとても大切なポイントだと思います。

目的が「繰り返す膀胱炎を改善すること」であれば、単純に全身の女性ホルモン量を増やすのではなく、GSMがあるのかを評価し、必要であれば局所治療を考える。

治療には「何のために、その治療をするのか」という視点が必要です。

ガイドラインは「まず基本となる治療をしましょう」という道しるべ

2025年に米国のAUA/SUFU/AUGSからGSMのガイドラインが発表されています。

ガイドラインというのは、簡単に言えば、

「現在の医学的根拠をもとに、まず基本となる診断・治療をしましょう」

という道しるべです。

もちろん、ガイドライン通りに治療すれば全員が治るわけではありません。

セルフケアをしても治らない。
保湿剤が合わない。
局所ホルモン療法を行っても症状が残る。

そういう方もいらっしゃいます。

そのときには、筋筋膜性疼痛、骨盤底筋の問題、膀胱そのものの病気など、さらに専門的な視点から原因を探し、次の治療戦略を考えていきます。

また、いわゆる「フェムケア」として販売されているサプリメントやさまざまなオイル・製品についても、医学的な有効性が十分に証明されていないものがあります。

「フェムケアだから身体に良い」と一括りにするのではなく、まずは基本となるセルフケアや保湿、必要に応じた局所ホルモン療法など、エビデンスのある治療から考えていくことが大切です。

「また膀胱炎だから抗生剤」から一歩先へ

「次はどの抗生剤を飲むか?」ではなく、
「なぜ私は膀胱炎を繰り返すのか?」

を考える。

原因を見つけることで、抗生剤を繰り返す生活から抜け出しましょう。

繰り返す膀胱炎は、感染を治すだけではなく、感染を起こしやすくしている背景まで診る。

それが「根本的に治したい」という患者さんの希望に応える第一歩だと思います。

日本橋骨盤底診療所

https://npfclinic.jp

AUA/SUFU/AUGS 2025 GSMガイドライン⁠

https://www.auanet.org/guidelines-and-quality/guidelines/genitourinary-syndrome-of-menopause

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