「先生、膀胱がんは転移しやすいって言うから…」
先日、膀胱がんの日帰り手術を受けられた患者さんから、
「先生が膀胱がんは転移しやすいっていうから、これからはがんセンターで診てもらわないといけないと思って。紹介状を書いてください」
と言われました。
「あれ? そんな説明した???」
実際にお渡しした説明用紙を一緒に確認してみると、原因がわかりました。
「再発」と「転移」を勘違いされていたのです。
膀胱がん、特に初期の低悪性度のものは、経尿道的に腫瘍を切除することで治療できます。今回はTULAによる生検と焼灼で根治術を行なっています。
ただし、膀胱がんには一つ特徴があります。
膀胱の中に「再発」しやすい!
低悪性度の表在性膀胱がんでも、長期的には約半数に膀胱内再発がみられるとの報告があり、手術できれいに取れたからといって、それで診療終了ではありません。
まず手術後3か月を目安に膀胱鏡を行い、その後もがんの悪性度や数、大きさ、これまでの再発歴などに応じて定期的に膀胱鏡や尿検査、必要に応じて尿細胞診などを行います。
ここで大切なのが、
「再発」と「転移」は違う
ということです。
膀胱がんでいう「再発」は、膀胱の中に再び腫瘍ができることが多く、早期に見つければ再び経尿道的に治療できるものがほとんどです。
一方、「転移」は、がん細胞がリンパ節や肺、骨など膀胱以外の場所へ広がった状態です。こちらは抗がん剤などの全身治療が必要になることがあります。
この違いを説明すると、
「嫌だ〜先生!(笑)私、勘違いしてたわ〜」
と患者さん。
二人で大笑いしました。
でも、笑ったあとで少し反省しました。
医療者にとっては当たり前の「再発」と「転移」の違いも、患者さんにとってはどちらも
「がんがまた出てくる」
という、とても怖い言葉だと思います。
こちらが「説明した」ことと、患者さんに「伝わった」ことは同じではありません。
膀胱がんは再発することがある。
だから定期的に膀胱の中をチェックする。
でも、
「再発しやすい」=「転移しやすい」ではありません。
言葉一つで、患者さんを必要以上に不安にさせてしまうことがあります。
伝える側として、もう一度襟を正さなければと思った出来事でした。
日本橋骨盤底診療所




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