本日は「膀胱炎を繰り返す」と受診された方のお話です。
渡された膀胱炎の記録を見て驚きました。
50代女性。2年前から毎月1〜2回、最近では毎週のように抗生剤を服用されていました。
2年間で30回以上抗生剤が投与され、途中でESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌)も2回検出されています。抗生剤の効きにくい大腸菌です。
高齢者が急性腎盂腎炎となると生命に関わる厄介な大腸菌です。
では、当院での初診時の所見はどうだったか。
尿検査では白血球+++。
尿沈渣では白血球20–29/HPF、細菌+。
症状としても、「なんとなく残尿感がある」「膀胱なのかよくわからない部位の不快感がある」とのこと。
これだけを見ると、“また膀胱炎”と診断してしまいそうです。
しかし、ここまで治らない「膀胱炎」は、本当に膀胱炎なのかを考えなければなりません。
膀胱がん、間質性膀胱炎(IC/BPS)などを疑い、膀胱鏡検査は必須です。
実際に膀胱鏡を行うと、粘膜はとても綺麗。
300mL注水しても五月雨状出血は起こらず、痛みも出ない。
つまり、膀胱がんでも間質性膀胱炎でもありませんでした。
では、何だったのか。
「グレートプリテンダー(great pretender)」とも呼ばれる
筋筋膜性頻尿症候群(Myofascial Urinary Frequency Syndrome:MUFS) と診断できました。
診断の決め手は、台上診での内閉鎖筋の圧痛と、そこから下腹部へ広がる関連痛です。
MPPSとMUFSの違い
筋筋膜性骨盤疼痛症候群(MPPS)と、筋筋膜性頻尿症候群(MUFS)は、原因となる筋肉やトリガーポイントは非常によく似ています。
しかし症状が違います。
- MPPS
→ 下腹部痛、陰部痛、性交痛、骨盤痛など「痛み」が主体 - MUFS
→ 頻尿、残尿感、尿意切迫感など「尿路症状」が主体
→ 痛みを伴わないことも多い
同じようなトリガーポイントなのに、なぜ症状が違うのか。
これは私自身、とても不思議に感じています。
神経伝達、筋膜、感作、脳の認識など、まだ解明されていない部分が多い領域です。
「原因不明」とされる慢性骨盤痛
慢性骨盤痛を巡っては、
泌尿器科では
- 慢性前立腺炎
- 間質性膀胱炎
- 慢性骨盤痛症候群
婦人科では
- 陰部痛
- 性交痛
さらには精神的な問題とされてしまうことも少なくありません。
実際には、多くが「どこが痛みや症状の発生源なのか」が十分に評価されていないだけなのかもしれません。
私は現在、これらを広く
筋筋膜性骨盤疼痛症候群(MPPS)
として捉えています。
そして治療は「膀胱の治療」ではなく、
筋肉・筋膜への治療です。
つまり、一般的な筋筋膜性疼痛症候群(MPS)の考え方を、骨盤底へ応用しているのです。
抗生剤を繰り返す前に
もちろん、本当の細菌性膀胱炎は存在します。
しかし、症状と尿検査だけで「膀胱炎」と診断され続けることで、
- 不必要な抗生剤投与
- 耐性菌(ESBLなど)
- 慢性的な不安
- “治らない病気”という思い込み
につながってしまうことがあります。
尿検査は大切です。
しかし、尿検査だけが全てではありません。
「どこが原因で、なぜ症状が出ているのか」
そこを丁寧に診ることが、慢性症状にはとても重要だと感じています。
尿検査で白血球や菌が出た原因は、女性だと帯下混入や腟前庭がGSMのためその粘膜の炎症を拾ってしまう事が多いです。




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