性交痛の原因は「会陰腱中心」だった
「性交痛」と聞くと、多くの方は腟の中や婦人科的な病気をイメージされるかもしれません。しかし実際には、痛みの原因が骨盤底筋や会陰部の筋膜にあることも少なくありません。
先日、20代女性の方が「挿入時の痛み」を主訴に受診されました。婦人科では問題無しと言われた方です。
詳しくお話を伺うと、
- 挿入事の痛みがある
- 正常位で強い痛みがある
- 騎乗位では比較的痛みが少ない
という特徴がありました。
性交痛の原因を探る診察
性交痛の診察では、単に腟の中や子宮を見るだけでは不十分な事があります。
診察のポイント
- 下腹部の圧痛
- 腟前庭(入口部分)の痛み
- 会陰部の圧痛
- 骨盤底筋の緊張や圧痛
などを総合的に評価します。
粘膜性か筋筋膜性の判断が重要です。
今回の患者さんでは、
- 尿道口上部の腟前庭に痛み
- 会陰腱中心(Central Tendon of Perineum)に非常に強い圧痛
を認めました。
さらに、その部位への筋膜リリースを行うと症状が軽減し、痛みの主な原因が会陰腱中心周囲の筋・筋膜にあることが考えられました。
会陰腱中心とは?
会陰腱中心は、腟と肛門の間に位置する骨盤底の重要な支点です。
この部分には、
- 浅会陰横筋
- 球海綿体筋
- 外肛門括約筋
- 肛門挙筋群
など複数の筋肉が集まっています。
長時間の座位、スポーツ、ストレスによる筋緊張、出産歴などをきっかけに、この部分が過緊張や瘢痕化を起こすと性交時の痛みの原因になることがあります。
特に正常位では会陰部への圧力がかかりやすく、騎乗位では圧力のかかり方が変わるため、体位によって痛みが変化することがあります。
今回の治療方針
1. 骨盤底リハビリテーション
まず重要なのは、過緊張を起こした骨盤底筋を正常な状態に戻すことです。
リハビリテーションでは、
- 会陰腱中心への負荷軽減
- 筋膜リリース
- ストレッチ
- 呼吸法
- セルフケア指導
などを行います。
「鍛える」だけが骨盤底治療ではありません。
痛みがある場合は、まず「緩める」ことが大切です。
2. 体外衝撃波治療(ESWT)
近年、筋筋膜性疼痛に対する体外衝撃波治療が注目されています。
衝撃波には、
- 痛みを和らげる作用
- 筋膜の柔軟性改善
- 血流改善
などが期待されます。
会陰部や骨盤底筋の慢性的な痛みに対して有効なケースがあります。
3. 腟前庭痛の治療
今回の患者さんでは、腟前庭にも炎症性の痛みが認められました。
まずは抗炎症軟膏による治療を開始し、粘膜の状態を改善していく方針としました。
性交痛の治療は原因によって異なる
性交痛は一つの病気ではありません。
原因として、
- 腟前庭炎
- 閉経関連尿路性器症候群(GSM)
- 骨盤底筋の過緊張
- 筋筋膜性骨盤疼痛症候群(MPPS)
- 子宮内膜症
- 骨盤内炎症
- 瘢痕や外傷
など様々な疾患が存在します。
そのため、
「痛いから潤滑ゼリーを使いましょう」
だけでは解決しないことも少なくありません。
どの部位が痛いのか、なぜ痛いのかを正確に評価することで、初めて適切な治療が選択できます。
まとめ
性交痛は「腟の問題」と考えられがちですが、骨盤底筋や会陰腱中心が原因となっているケースもあります。
特に、
- 体位によって痛みが変わる
- 婦人科で異常なしと言われた
- 長期間痛みが続いている
という方は、骨盤底筋の評価が必要かもしれません。
性交痛は我慢するものではありません。
原因を正しく診断し、適切な治療を行うことで改善できる可能性があります。
日本橋骨盤底診療所




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