尿失禁や骨盤臓器脱の予防・改善を目的に、ピラティスやヨガに取り組まれている方は少なくありません。
実際、多くの教室で「骨盤底筋を意識しましょう」という指導が行われており、骨盤底の健康は大きなテーマとなっています。
先日受診された患者さんも、ピラティスのインストラクターから
「これ以上改善しないようなら、一度専門医を受診してみてください」
と勧められ来院されました。
一生懸命トレーニングしているのに改善しない
診察すると、患者さんは骨盤底筋を鍛えようと非常に熱心に取り組まれていました。
しかし実際に骨盤底筋の収縮を評価すると、問題が見えてきました。
骨盤底筋を締めているつもりでも、
- お尻の筋肉
- 太ももの内側の筋肉
- 腹筋
などの「アウターマッスル」が優位に働いてしまい、本来働くべき骨盤底筋はほとんど収縮していませんでした。
さらに、力の入れ方によっては骨盤底が持ち上がるどころか、逆に下方へ押し出されてしまう状態でした。
骨盤底機能不全とは?
このような状態は「骨盤底機能不全」の一つと考えられます。
特に今回のケースでは、
骨盤底筋協調不全(Pelvic Floor Dyssynergia)
と呼ばれる状態に近いものでした。
筋力がないわけではありません。
問題は、
「正しく収縮できていないこと」
です。
ゴルフやテニスでもフォームが重要なように、骨盤底筋もまずは正しい動かし方を学ぶ必要があります。
間違ったトレーニングが症状を悪化させることも
「骨盤底筋を鍛えましょう」
という言葉だけが独り歩きしてしまうことがあります。
しかし、間違った方法で力を入れ続けると、
- 尿失禁の悪化
- 骨盤臓器脱の進行
- 骨盤底筋の過緊張
- 排尿や排便の障害
につながることがあります。
頑張れば頑張るほど良くなるわけではありません。
間違ったフォームで何百回も練習するよりも、正しい収縮を1回覚える方が重要です。
骨盤底リハビリテーションで学ぶ「型」
当院では、まず骨盤底リハビリテーションで
骨盤底筋の正しい「型」
を身につけていただきます。
重要なのは、
「締める」
だけではありません。
骨盤底筋はハンモックのような構造をしており、
- 尿道
- 腟
- 直腸
を下から支えています。
そのため、
骨盤底筋のアーチを作るように収縮する
ことが大切です。
イメージとしては、
「肛門を締める」
よりも、
「会陰部全体がふわっと持ち上がる」
感覚です。
このアーチ構造が作れるようになると、
- 尿失禁の改善
- 骨盤臓器脱の進行予防
- 排尿機能の改善
- スポーツ時の安定性向上
が期待できます。
ピラティスやヨガは素晴らしい
誤解していただきたくないのは、
ピラティスやヨガそのものが悪いわけではありません。
むしろ、
- 呼吸
- 姿勢
- 体幹機能
- 身体への意識
を高める非常に優れた方法です。
ただし、
「骨盤底筋を正しく使えていること」
が前提になります。
骨盤底筋の収縮がうまくできない方は、まず専門的な評価を受け、その後にピラティスやヨガを行うことでより高い効果が期待できます。
まとめ
尿失禁や骨盤臓器脱で悩む方の中には、骨盤底筋を頑張って鍛えているにもかかわらず、実際には正しく使えていない方が少なくありません。
大切なのは筋力よりもまず「型」。
骨盤底筋のアーチを作り、正しい収縮パターンを身につけることが改善への第一歩です。
日本橋骨盤底診療所





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