前立腺全摘除後の尿もれ
〜頑張って骨盤底筋体操をしているのに改善しない理由〜
本日も、前立腺全摘除術後の尿失禁でお悩みの方が受診されました。
1日200mLパッドを4〜5枚使用。
しかし、
- 座っている時は漏れない
- 寝ている時は漏れない
- 立つと漏れる
- 歩くと漏れる
という状態でした。
お話を伺うと、
「YouTubeで勉強して、毎日欠かさず骨盤底筋体操を続けています」
とのこと。
実は、このような方は少なくありません。
「頑張っているのに治らない」
その理由は、努力不足ではなく、鍛えるべき機能とゴール設定が少しずれていることが多いのです。
骨盤底筋は収縮しているのに漏れる
経会陰エコーで確認すると、
- 骨盤底筋の収縮はできている
- しかし2〜3秒で緩んでしまう
- その後は臀筋や腹筋などのアウターマッスルで締め上げようとしている
状態でした。
つまり、
「全くできていない」のではなく、「使い方が少し違う」
のです。
尿禁制は力いっぱい締め続けることではない
多くの方は、
「もっと強く締めなければ」
と考えます。
しかし、普段の生活で必要なのは最大筋力ではありません。
立っている時や歩いている時の尿禁制は、
- 尿道括約筋が軽く閉じる
- 尿道粘膜がふかふかと密着する
- 骨盤底筋が持続的にサポートする
ことで保たれています。
実は、
力いっぱい締め続ける必要はないのです。
水道の蛇口も締め上げていない
水道の蛇口を想像してください。
全力で締め上げなくても水は漏れません。
水筒の蓋も同じです。
適切な圧力で閉じていれば漏れないのです。
尿道も同じで、
「強く締める能力」だけではなく、
「適切な圧力を長時間維持する能力」
が重要になります。
100m走とマラソンは違う
前立腺全摘除後の尿禁制を回復するためには、
100m走の筋肉ではなく、
マラソンを走る筋肉が必要です。
- 強く短く締める
- 瞬間的に力を出す
だけでは不十分です。
むしろ、
- 軽い力を長時間維持する
- 無意識に働き続ける
- 日常生活で自動的に使える
ことが重要になります。
鍛える筋肉も、トレーニング方法も、目指すゴールも異なります。
「骨盤底筋体操をしているのに治らない」は珍しくない
前立腺全摘除後の患者さんの中には、
一生懸命トレーニングしているにもかかわらず、
- 間違った筋肉を使っている
- 力みすぎている
- 持続収縮ができていない
- 呼吸と協調できていない
というケースが少なくありません。
そのため当院では、
経会陰エコーを用いて骨盤底の動きを可視化し、
「本当に正しく使えているか」
を確認しながらリハビリテーションを行っています。
尿失禁治療には多くの選択肢がある
前立腺全摘除後の尿失禁は、
「我慢するしかない」
病気ではありません。
状態に応じて、
- 骨盤底リハビリテーション
- 薬物療法
- 高テスラ磁気刺激療法
- レーザー治療
- PRP尿道括約筋注入療法
- 人工尿道括約筋(AUS)
など様々な治療選択肢があります。
大切なのは、
なぜ漏れているのかを正しく診断すること。
そして、
自分の尿失禁の原因に合った治療を選択することです。
「頑張っているのに改善しない」
そんな方こそ、もう一度原因を見直してみる価値があるかもしれません。
日本橋骨盤底診療所




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