「気のせい」ではなかった陰部痛 ― 60代女性の症例から


座っているのもつらいほどの痛み
60代の女性が、陰部の痛みを訴えて受診されました。座っていることすらつらいという状態です。


すでに泌尿器科、婦人科を受診されていましたが、画像検査などでは「異常なし」。

ご本人は「気のせいなのか」「考えすぎなのか」と悩み、心療内科の受診を勧められたこともあったそうです。
しかし、痛みは確かにそこにありました。


診察でわかったこと ― 筋筋膜性骨盤疼痛症候群
実際に診察してみると、骨盤底筋に明らかな圧痛点(トリガーポイント)が複数見つかりました。これは「筋筋膜性骨盤疼痛症候群」と呼ばれる病態です。


画像検査では写らない、筋肉そのものの過緊張や瘢痕化した部分が痛みの原因になっていることがあり、婦人科・泌尿器科的な異常がないからといって「原因がない」わけではありません。


治療として、以下を組み合わせて行いました。
• 骨盤底筋のリハビリテーション
• 体外衝撃波治療
• ご主人による筋膜リリース(ご家庭でのケア)
並行して、局所ホルモン療法も開始しました。
これらにより、症状はかなり改善しました。
再発 ― しかし今回は「別の原因」だった
しばらくして、再び陰部の痛みで受診されました。しかし詳しく診察すると、骨盤底筋そのものの痛みはほぼ改善していました。今回の痛みは、別の場所から来ていたのです。
原因は腟前庭(小陰唇の内側)の粘膜でした。腟pHを測定すると8.0(通常は4.5以下)と大きくアルカリ性に傾いており、粘膜は赤くただれていました。
よくお話を伺うと、症状が落ち着いていた間に、局所ホルモン療法をご自身の判断で中断されていたことがわかりました。これが再発の引き金になったと考えられます。
そこでGSM治療を再開し、今回は局所ホルモン療法とレーザー治療を併用することにしました。


GSM(閉経関連尿路性器症候群)とは
GSMとは、女性ホルモンの減少によって腟や尿道周囲の粘膜が萎縮する病態です。
• 潤いが減少する
• 粘膜が傷つきやすくなる
• 感染を起こしやすくなる


こうした変化は、乾燥感や性交痛だけでなく、頻尿や膀胱炎を繰り返すといった尿路症状としても現れます。

一度治療で改善しても、ホルモン療法を自己判断で中断すると、粘膜の状態は再びもとに戻ってしまうことがあります。今回の症例は、まさにそれを示す例でした。


なぜ男性にも知ってほしいのか


GSMは婦人科だけの問題ではありません。

パートナーである男性がこの病態を理解しているかどうかが、問題解決の大きな糸口になることがあります。


今回の症例でも、ご主人による筋膜リリースへの協力が、改善の一助となりました。


「気のせいではないか」と本人だけが悩みを抱え込んでしまう前に、夫婦・パートナー間で問題意識を共有できることが、何より大切だと感じています。

https://ameblo.jp/urourohirokazu/entry-12956296961.html

日本橋骨盤底診療所

https://npfclinic.jp

監修

日本橋骨盤底診療所 理事長 安倍弘和

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