手術の合併症を治す。—膀胱腟瘻・尿管損傷・術後尿失禁の修復—

「手術の合併症を、取り戻す」

—3つの修復治療を行った一日

・膀胱腟瘻根治術 1例
・回腸を利用した尿管再建術 1例
・前立腺がん術後尿失禁に対するPRP治療 1例

を行いました。

疾患も治療方法もそれぞれ異なりますが、共通しているのは、「手術後に生じた問題を治すための治療」だったことです。

手術を受けた結果、起こってしまった合併症。

患者さんにとっては、「病気を治すために手術を受けたのに、なぜまた治療を受けなければならないのか」という、とてもつらい状況でもあります。

だからこそ、できる限り元の生活を取り戻せるよう、難しい修復・再建に取り組んでいます。

修復手術で最も苦戦する「癒着剥離」

術後の修復手術で、最も神経を使うのが癒着剥離です。

一度手術をした場所では、本来は別々に存在している臓器や組織が強く癒着していることがあります。

その中から尿管や膀胱、血管などの大切な構造を見つけ出し、傷つけないように剥離していきます。

イメージとしては、

「コンクリートの中に埋まった電線を、切らないように一本ずつ取り出していく」

ような操作です。

どこまでが正常な組織で、どこからが癒着なのか。

少しずつ確認しながら進んでいきます。

膀胱腟瘻

—膀胱と腟を一度分離する

膀胱腟瘻は、膀胱と腟の間に本来存在しない交通ができてしまい、腟から尿が漏れてしまう病気です。

今回もまず強い癒着を丁寧に剥離し、膀胱と腟の間を十分に剥離(分離)しました。

そのうえで瘻孔部分を処理し、血流の良い部分を利用

膀胱を縫合

腟を縫合

その間に脂肪組織を充填

して再建しました。

膀胱周囲にある脂肪組織を利用する方法は、亀田総合病院泌尿器科でさまざまな修復手術に用いてきました。

血流のある組織を膀胱と腟の間に介在させることで、縫合部同士が直接接するのを避けることができます。

これまでの経験でも良好な成績が得られており、私たちにとって重要な選択肢の一つになっています。

尿管損傷

回腸を使って尿の通り道を再建する

もう一人の患者さんは、尿管損傷後の狭窄です。

術前検査から、狭窄している場所が腎盂に近い、つまり腎臓から尿管が出てすぐの場所であることが分かっていました。

そこで今回は、骨盤内で比較的見つけやすい尿管をまず確認し、そこから腎臓に向かって尿管をたどっていく作戦を立てました。

実際に手術をしてみると、術前に予想していた通り、尿管は広い範囲にわたってダメージを受けていました。

癒着も非常に強く、剥離には苦労しました。

それでも慎重に尿管をたどっていき、ようやく腎臓近くの状態の良い尿管に到達することができました。

ここまで来れば、次は再建です。

傷んでしまった尿管を無理につなぐのではなく、今回は小腸の一部である回腸を尿管の代わりとして利用しました。

腎臓側の尿管と回腸を吻合し、さらに回腸の反対側を膀胱へ吻合。

こうして、腎臓から膀胱までの新しい尿の通り道を再建することができました。

尿管損傷の範囲が長い場合には、膀胱を引き上げる方法などでは届かないことがあります。

そのようなケースで、回腸を利用した尿管再建は大切な選択肢になります。

前立腺がん手術後の尿失禁にも

「修復」という考え方

そしてもう一人は、前立腺がん手術後の尿失禁に悩まれている患者さんです。

前立腺がんを治療した後、一部の方には尿失禁が残ることがあります。

今回はPRP(多血小板血漿)を尿道括約筋周囲へ注入する治療を行いました。

この治療については適応を慎重に判断する必要がありますが、当院で治療を行っている患者さんの中には、尿失禁がかなり改善している方もいらっしゃいます。

がんは治った。

でも、尿失禁が残った。

それを「仕方がない」で終わらせず、その後の生活まで取り戻すことも、私たちが取り組む骨盤底診療の一つだと考えています。

「治す手術」の、その先へ

膀胱腟瘻。
尿管損傷。
前立腺がん術後尿失禁。

昨日は、結果として術後合併症の修復に向き合う一日となりました。

「どうすれば、もう一度正常に近い状態へ戻せるか」

を考える。

尿路再建や骨盤底診療には、病気そのものを治すだけではなく、治療後に残ってしまった問題を治すという役割があります。

昨日の3人の患者さんが、それぞれ少しでも本来の生活を取り戻してくださることを願いながら、術後の経過をしっかり見守っていきたいと思います。

亀田総合病院

https://medical.kameda.com/general/patient/index.html

日本橋骨盤底診療所

https://npfclinic.jp

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